最近のコミック・ソングは何をやっておるのか、といいたい。
クレイジーやトニー谷を聴くにつけ、そう思う。そりゃ、今でもいっぱい出てますよ、特に年末に。いわゆる忘年会ソングというやつね。酒を飲んだ席での余興に、余り歌のうまくない奴がウケをねらって歌うやつね。そして、全然おもしろくないの。
あのね、違うんだよね。歌詞だけおもしろくたって(あんまりおもしろくないのが多いけど)、しょーがないの。曲ですよ、曲。それも編曲。楽器の入れ方が、キメるのですよ。そして、歌い方。いや、歌い手のキャラクターといった方がいいね。クレイジー・ソング聴きゃわかるでしょ、そんなの。怒るよホントに。プンプン。
歌詞だけで笑わせるってのは、どーしても飽きちゃうんだよね。何回も聴くんだから。ま、その場限りでいいってゆーのなら、いいんだけどさ。人間、そんなに志を低くしちゃあいけません。
なんて怒ってるのは、悲しいからなのですね。時々、ロックやポップスではなく、コミック・ソングのようなものを無性に聴きたくなるときがある。人間誰しにも、そーゆう時があると思う。そんな時、クレイジーやトニー谷やエノケンの他に、何を聴いたらいいんだよう。 といってたら、その欲求を満たしてくれそうなものを見つけた。昔のアニソンを集めたCDを聴いていたら、そこに数曲、みょーなのがあったのですね。 『おらぁグズラだど』
これは谷啓が歌ってるんだけど、もうひとつのクレイジー・ソングといってもいいほどの出来である。「おーらぁグズラだどっひっひっひっひー、怒ると怖いよカッカッカッカッカー」などと、谷啓らしさがバンバンに出た曲であり、歌いっぷりもそれに答えている。 『ばくはつ五郎』
男性コーラスグループ(ハニーナイツかなんか)が爽やかに歌っている。「ストップといったら涙が止まる。けんかをしたってくよくよするな」などと、おお、70年代さわやか青春路線! 森田健作! などと感心していると、「……そんなこーとを、そーんなことをー、考えているからああぁ、ばっくはつごぉろぉおは、ばくはつごぉろぉうは、イカしていーるんだよぉお」とスカされてしまう。これではまるで江口寿史ではないか。 『珍豪ムチャ兵衛』
誰かこんなアニメ見たことあるのかと思っていたら、うちの川合君が「わたし見たことあります」と言うので恐れ入った。熊倉和雄が歌ってるんだけど、何がおかしいって、いきなりあの声で「ぼけまぁるぅ〜さぁまぁあよ〜」と歌い出されてしまうのがおかしい。アニメを見ていないこちらには、「ぼけまる様」というのが、一体何者かまったくわからないので余計におかしい。と、川合君に言ったら「ぼけまる様」が何であるか、説明されてしまった。とほほ。 『どろろの歌』
これはすごいぞ。『ホンダラ行進曲』と同じぐらいすごい。いきなり「ホゲホゲタラタラホゲタラポン、ホゲホゲタラタラホゲタラピー」ですよ、あーた。続けざまに「ホケホケ侍ヘーラヘーラ、トロトロ侍ヘーラヘーラ」と来るわけですよ。その後も「フニョフニョホゲタラ」とか「ホキャホキャホゲタラ」とか続いているかと、いきなり転調して、「赤い夕陽に照り映えて……」などと何の前触れもなく状況描写にはいってしまう。普通の歌になったかと安心していると、突然「とぼけちゃいけねぇ知ってるぜぇ!」としかられてしまう。何事かと思っていると、「おまえらみいんなホゲタラだ。ホゲホタラタラホゲタラポーン!」などと勢いよく決め付けられてしまい、我々は、そーかそーだったのか、と深くラジカセの前で反省するしかないのであった。
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