ToRANU TあNUKI NO.96〜97〔1988.10.29発行〕掲載

けーいちくんのMUSIC LIFE IN SHINJUKU その3


 今回の音楽ネタは当時のコミックソングのふがいなさを論ずるつもりであったが、途中から様子が変わって......。いや、ほんとあのころはいろんなものを聴いておりましたねえ。お得意のバカネタのひとつ。

 最近のコミック・ソングは何をやっておるのか、といいたい。
 クレイジーやトニー谷を聴くにつけ、そう思う。そりゃ、今でもいっぱい出てますよ、特に年末に。いわゆる忘年会ソングというやつね。酒を飲んだ席での余興に、余り歌のうまくない奴がウケをねらって歌うやつね。そして、全然おもしろくないの。
 あのね、違うんだよね。歌詞だけおもしろくたって(あんまりおもしろくないのが多いけど)、しょーがないの。曲ですよ、曲。それも編曲。楽器の入れ方が、キメるのですよ。そして、歌い方。いや、歌い手のキャラクターといった方がいいね。クレイジー・ソング聴きゃわかるでしょ、そんなの。怒るよホントに。プンプン。
 歌詞だけで笑わせるってのは、どーしても飽きちゃうんだよね。何回も聴くんだから。ま、その場限りでいいってゆーのなら、いいんだけどさ。人間、そんなに志を低くしちゃあいけません。
 なんて怒ってるのは、悲しいからなのですね。時々、ロックやポップスではなく、コミック・ソングのようなものを無性に聴きたくなるときがある。人間誰しにも、そーゆう時があると思う。そんな時、クレイジーやトニー谷やエノケンの他に、何を聴いたらいいんだよう。

 といってたら、その欲求を満たしてくれそうなものを見つけた。昔のアニソンを集めたCDを聴いていたら、そこに数曲、みょーなのがあったのですね。

 『おらぁグズラだど』
これは谷啓が歌ってるんだけど、もうひとつのクレイジー・ソングといってもいいほどの出来である。「おーらぁグズラだどっひっひっひっひー、怒ると怖いよカッカッカッカッカー」などと、谷啓らしさがバンバンに出た曲であり、歌いっぷりもそれに答えている。

 『ばくはつ五郎』
男性コーラスグループ(ハニーナイツかなんか)が爽やかに歌っている。「ストップといったら涙が止まる。けんかをしたってくよくよするな」などと、おお、70年代さわやか青春路線! 森田健作! などと感心していると、「……そんなこーとを、そーんなことをー、考えているからああぁ、ばっくはつごぉろぉおは、ばくはつごぉろぉうは、イカしていーるんだよぉお」とスカされてしまう。これではまるで江口寿史ではないか。

 『珍豪ムチャ兵衛』
誰かこんなアニメ見たことあるのかと思っていたら、うちの川合君が「わたし見たことあります」と言うので恐れ入った。熊倉和雄が歌ってるんだけど、何がおかしいって、いきなりあの声で「ぼけまぁるぅ〜さぁまぁあよ〜」と歌い出されてしまうのがおかしい。アニメを見ていないこちらには、「ぼけまる様」というのが、一体何者かまったくわからないので余計におかしい。と、川合君に言ったら「ぼけまる様」が何であるか、説明されてしまった。とほほ。

 『どろろの歌』
これはすごいぞ。『ホンダラ行進曲』と同じぐらいすごい。いきなり「ホゲホゲタラタラホゲタラポン、ホゲホゲタラタラホゲタラピー」ですよ、あーた。続けざまに「ホケホケ侍ヘーラヘーラ、トロトロ侍ヘーラヘーラ」と来るわけですよ。その後も「フニョフニョホゲタラ」とか「ホキャホキャホゲタラ」とか続いているかと、いきなり転調して、「赤い夕陽に照り映えて……」などと何の前触れもなく状況描写にはいってしまう。普通の歌になったかと安心していると、突然「とぼけちゃいけねぇ知ってるぜぇ!」としかられてしまう。何事かと思っていると、「おまえらみいんなホゲタラだ。ホゲホタラタラホゲタラポーン!」などと勢いよく決め付けられてしまい、我々は、そーかそーだったのか、と深くラジカセの前で反省するしかないのであった。

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