Light Wolds vol.2〔1986.5.1発行〕掲載
「FEEL THE KYON2」から、一年後の続論である。やはり青い。まだ青い。途中面白い着眼をしているが、論をまとめきれていない。そして尻切れトンボ的に終わっている。まあ、しょうがないか。
「SLAVE TO THE」というのは、当時出たグレイ ス・ジョーンズのアルバムのタイトルから取られている。本誌ではそのジャケットをまねて、「活人」という雑誌の創刊号に掲載された「クロンボ小泉」の写真をコラージュしてあり、実は密かに自分でこれが傑作と思っている。今、お見せできないのが残念。
「85年も、果たして小泉今日子の年となりうるだろうか。」
まず、85年後半以降の小泉今日子自体の活動を復習してみよう。 と、まずここまで。 「常夏娘」「魔女」(しつこくもタイトル=キャッチフレーズであるが)の二作はどちらもオリコン初登場No1を獲得したが、それまでの路線を着実に踏襲したもので、それまでの小泉今日子=KYON2を超えるものではなかった。実際、この時期、彼女は「19歳ってなんか中途ハンパ。早く二十歳になりたい。19はオトナシクしてる。」の言葉通りか、あまり派手な活動はしていないように見える。 だが、
世間は許してくれなかったのである。そう、例の〈新人類〉である。
例えば、七月三日「夜のヒットスタジオDX」に「ハートブレイカー」を唄う「KYON2(キョンツー)」という歌手が出演した。「KYON2」はそのとき、もう一人の自分が、アイドルという言葉に邪魔されてできないことを、その名前でやって行って、いつか二つが重なればいい、と語った。 それを救ったのが、「なんてったってアイドル」だ。
まず第一にこれは、小泉の新曲タイトル一般公募によって選ばれたタイトルの曲であり、その性格からして〈タイトル=キャッチフレーズ〉の決定版、すなわちこれまでのシングルの集大成といえる。 小泉今日子は、小泉今日子となる以前の小泉今日子、そして小泉今日子が現れる以前のアイドルの歴史、それから小泉今日子に立ち並ぶアイドル達、これらすべてを内包し、常に現在であり続ける。 これが「小泉今日子そのもの」ということの意味である。 そうしてKYON2は再び小泉今日子に統合された。本人もどこかで言っている。「最近、KYON2と小泉今日子の区別はあまり気にしてない」と。いいことだ。 「なんてったってアイドル」以降、小泉は「小泉今日子そのもの」を全開させた活動を続けている。クリスマスに出たヴィデオ『今日子』、コンサートの記録をも収めた貴重モノであるが、彼女のオフでの様子がふんだんに収録されている。ここに小泉今日子の菅を見る、といった言い方は間違いである。ここには「小泉今日子そのもの」が写っているにすぎない。同じ意味で、四月から始まった「オールナイトニッポン」も、ドラマ「花嫁人形は眠らない」も「小泉今日子そのもの」を生かしたいい仕事である。「花嫁人形は眠らない」の小泉は「少女に何が起こったか」の小泉の100倍素晴らしい。これはもちろん小泉の演技云々の問題ではない。問題はいかに制作者が小泉今日子を理解しているか、ということである。いかにして「小泉今日子そのもの」を引き出すか。 「なんてったてアイドル」によって更に抜けた小泉今日子が一体どうなっていくのか、真に楽しみというほかはない。 僕 「とまあ、こんなところなんですが、いかがでしょう」 |