
これで阿部和重を読むのはまだ4冊目。
近年の作品まで全然辿り着いていないのだが、この作品がいまんとこ一番好きかなあ。
『アメリカの夜』も好きなんだけど、多角的に読める分、こちらの方はまたいつか読んでみたいなあと思わせる。
映写技師のバイトをする主人公は、映写するフィルムがアクシデントで切れると、それを繋ぐ際、全然関係ないフィルムを数コマ挟み込む。
この行為は主人公の生きる、編集可能、改ざん可能な世界を象徴する。
いくつかの少しずつ違った世界が重層的にそして無茶苦茶に重なり合う。
そこに投影された少しずつ違った「わたし」もみんな「わたし」なのだ。
本のコト 一覧
月9で絶賛放映中「ガリレオ」の云わずとしれた原作の一冊である。
『容疑者Xの献身』を昨年読もうと思った時に、事前にやはりシリーズを読んでおこうと、この前作『探偵ガリレオ』は読んだものの、こちらの方はそのままになっていた。
家人がTV放映の機会にシリーズを一気に読んだので、未読のこちらをついでに読んでみた。
読後の印象は、非常に淡泊だなあ、というもの。
まあ、この短さの中で結構凝ったトリックを解き明かしていくわけで、致し方ないかなあとも思うのだが、やはり物足りない感が残る。
で、いまだドラマの方は一話もちゃんと見てなかったりする。
あのキャストでは、淡泊って感じにはならないかな。
その分良かったりして。

ここのところのお気に入り桜庭一樹の新作である。
とにかく評判がいい。
『赤朽葉家の伝説』を既に凌いだとか、とにかく傑作とか、もうほんと絶賛の嵐。
気になるじゃないですか。
実際、本を手にとってみても、そんな傑作の“匂い”は確かにする。
引き込まれるように読む。
これまで読んだ彼女の他の作品同様、文章が肌に合うのか、するすると入ってくる。
またちょっと気になるところも同様で、細かい部分でのリアリティの欠如とでもいえばいいのか。
たとえば、それは「腐野」という名字であったり、新婦が一人でやってくる結婚式の一コマであったり、荒れる海の流氷のシーンであったり、かすかな違和感というか、スコッと中が抜けているような感じを覚えるのだ。
しかしながら、リアリティ云々を語るべき作品か否かということに関しては、十分留保をつけるべきであろうとも思う。
そんなの関係ねぇっ! って読者が大半だろう。
関係ねぇって云わせるだけのパワーが、この作品にあることも確かだ。
個人的にはいま一歩。
後半以降の部分が、こちらの期待に追いついてくれなかった。
あれあれ、このまま終わっちゃうのかよ、という不満が少し残ったんだよなあ。
ただ、題材、構成とも一級品で、読んで後悔しないことは保証する。
例によってあらすじはまったく紹介しないので、他をいろいろあたってみて興味を持ったら手にとって欲しい。

日本経済新聞にて10年間に渡って連載中の「デジタルスパイス」というコラムより、抜粋・再構成した書。
著者はノンフィクションライターだが、取材でデジタル機器を初期から駆使しており、その分野でもお馴染み。
これを読んで感じたのは、デジモノの進化は凄まじいが、記録というものに関する安全性はなおざりにされているということ。
保存メディアは年々驚くほどに大容量化、低価格化されていくわけだが、以前のメディアに保存したデータを移し替えるということに関する、圧倒的なめんどくささは変わっていない。
また、クラッシュに備えた保全性も個別対策に任され、抜本的な解決案が提示されていないといえよう。
便利さに隠れた不便さを、どんどん露わにしていくべきであろう。
いやあ、ここのところ思うように捗らない読書に業を煮やして読んでみたのがこれ。
確かにハッとさせられる。
曰く「読書は思索の代用品にすぎない。」
と、いいますと...。
「読書は言ってみれば自分の頭ではなく、他人の頭で考えることである。」
ははあ、なるほど。
もっとずばりと「読書とは他人にものを考えてもらうことである。」とも書いてある。
そこまでいうかね。
いや、読書の効用なりを求めてなんとはなしにひもといて見たのだが、こう云われてしまってちょっと目を覚まさせられたというべきか。
もちろん、読書を全否定しているわけではないので、あしからず。
つまりは、本読みながらついつい没頭できずに他事考えながら読んじゃったりすることが多いんだけども、それもよかろうってことでいいのかしら(爆。
ということじゃなくて???
なかなかに示唆に富んだ読みやすい書であります。
途中、偏屈オッサン振りを発揮してる箇所も勃発してますが、ご愛敬。
書名で惹き付けられるタイプの本で、ほう、どれどれと手に取ってみたくなる。
パラパラめくると「100円ショップ」「ケータイの料金体系」「安売りDVD」等、身近な話題が集められており親しみやすい。
それでいてさほど軽薄でもなさそうな雰囲気につられて買ってしまう。
果たして「コスト」をキーワードに経済の仕組みを説いたマジメな本であった。
それでいて図版含めて極めてわかりやすく書かれており、経済オンチの自分などでも十分楽しめた。
生活に密着したそうした話題はもとより、「所得格差」よりも「資産格差」の方が重大な問題であると主張する「経済格差」に関する考察も非常に興味深かった。
売れてるみたいだし、なかなか良書じゃないでしょーか。
そろそろ進路を考えなければならない長女にも、選択肢の一部として読ませてみたくなったり。






