エレキングブログ前夜
名古屋エレキング倶楽部 ブログ以前の読み物 1997〜2005(再構築版)
1998年4月12日(日)ELEKING'S CHOICE / BOOK

特集アスペクト『歌謡ポップス・クロニクル』

以前取り上げた週刊文春連載の近田春夫の「考えるヒット」は、依然絶好調であるが、それを楽しむための基礎資料ともいうべきがこの「特集アスペクト39『歌謡ポップス・クロニクル』」である。「考えるヒット」が現在の邦楽ヒットを読み解くものなら、このムックはそこに至る邦楽ヒットの流れを総ざらいしたものということになる。240ページに満たぬ冊子のため、歌謡曲の巨大な流れに比して突っ込み不足は否めないものの、邦楽の歴史のトピックを効率よく整理し、多彩なライターによるコラムや、ポイントとなる人のインタビューや対談などを配した構成はなかなか小気味がいい。
 歌謡曲の流れなどという、どうしても雑多な要素が入り込む題材には、一人の著者による詳細な論考よりも、こうしたムック本のとっちらかったまとめ方の方が、全貌をつかみやすいかもしんない。ライターも、梶本学、湯浅学、黒沢進、コモエスタ八重樫等、この人こそといった人たちから、川勝正幸、高浪慶太郎、高橋洋二から泉麻人、亀和田武まで揃えた布陣で、ニヤリとさせられる。浮ついていない編集姿勢にも好感が持てる。
 アスペクトのムックって、28「平成「お笑い」最前線」を読んだきりだけど、あれも西条満を中心に、浮つきがちのボキャブラ以降の「お笑い」ブームについて、腰の落ち着いた特集をしていて感心したっけ。別冊宝島のシリーズよりよっぽど実のあるシリーズとみた。アスペクトに注目。

1998年4月12日(日)ELEKING'S CHOICE / BOOK

『鉄(くろがね)の城』にパイルダー・オン

マジンガーZって、確かにTVも見ていたけれど、それよりテレビマガジンとかテレビランドとかでの特集での展開や、「対デビルマン」や「対暗黒大将軍」の映画版の印象が鮮烈であったような気がする。特にテレマガでのパブリシティー展開は強烈で、当時小学生としては、読者公募の機械獣の登場や、ジェットスクランダーやグレートマジンガー登場の予告に胸をワクワクさせて待ち望んだものである。そんな気分を見事に記録しているのが、「永井豪マンガ家生活30周年・マジンガーZ放送25周年W記念出版」と銘打たれたマジンガーZ解体新書「鉄(くろがね)の城」である。赤星政尚による講談社のムック本であるが、マジンガーZ本編の貴重な資料はもとより、前述した雑誌パブリシティーの数々や、コミカライズ作品、玩具や、カルビーのマジンガーZカード(あったよなあ)一覧まで、マジンガーを取り巻くことごとくを丁寧にカバーしている。
 うーん、世にオタク本数多くあれど、僕の期待するオタク本ってこの手のタイプのものなのよね。対象に対する余人を許さぬ思い入れの強さや、斬新な解釈などは基本的に不要。欲しいのは正確なデータと制作裏話的トピックの数々。それとその時代をふつふつと甦らせてくれる周辺的事象の網羅。そのすべてがこのムックには詰められており、いたく感心致しました。これ、マジンガー以外でもやってくんないかねえ。

1998年4月14日(火)ELEKING'S CHOICE / BOOK

今読むか、まとめて読むか『塗仏の宴(宴の支度)』

最近、出遅れるとそこら辺の本屋では買えなくなってしまうベストセラー本と化した京極夏彦の最新作『塗仏の宴』を、やっぱ出遅れて購入、先日読み終えた。今回は遂に上下2分冊ということで、まずは上巻の(宴の支度)。下巻は7月に出るということらしい。
 「支度」は、連作短編的な形を取っており、6つの話が微妙に重なり合って謎の核心を巡り廻っているといった仕掛けが妙。読み進むにつれ謎が謎を呼び、解きほぐされたかに見えた謎もさらにまた新たな謎を呼ぶ。ここら辺の仕掛けはまったくもってうまいよなあ。安心して読んでいられる数少ない作家の一人である。
 先に「小説推理メフィスト」で発表された2編は、単独で読んでもイケテル京極堂登場編。そんなことだったら我慢せずに先に読んでおくべきだったな。「ひょうすべ」のミスリーディングもうまくはまってる佳作。
 そんなわけで、今読むか7月にまとめて読むかは、とーぜん今すぐ読むべし。伏線を忘れてしまう危険性を顧みず、読まずにはいられますかってんだい。「始末」が出るまでに、過去の作品を復習し、人間関係を思い出しておくこと。読み返すのがイヤな人は京極系のサイトを廻って、旧作のおさらいをしておくべし。