輝く断片 / シオドア・スタージョン

輝く断片
輝く断片 / シオドア・スタージョン <奇想コレクション>
ああ、スタージョンがこんなにたくさん訳される時代が来るなんて! スタージョンの新しい単行本がこんなにずらっと書棚に並ぶ日が来るなんて!
という少し古めのSFファンの感想ももう見飽きた感もあるが、何を隠そう復刊ドットコムに『一角獣・多角獣』のリクエストを出した経験のある私メもその感想を抱く一人ではあるわけで。

学生の頃、人生初の失恋経験の直後に『一角獣・多角獣』を読み、その独特な人と人との触れ合いに関する考察に心打ち震え、それまでの『人間以上』という名作SFを書いた作家という漠然とした認識からMost Favoriteな作家に格上げとなって現在に至る。
奇妙な設定に幻惑されたままボヤボヤ読んでるうちに、突然ガツンと胸の奥の方のとある部分を鷲掴みにされ、そのままどこかに持ち去られてしまうような感覚がこの作家の一部の短編にはあって、人を恋うるような時、人さみしい時にその共振はいっそう高まる傾向にあるのかも知れない。
反面、何かかけ違うと、波長の合わぬままに読み終え、なんだかよくわからないなあ、で終わってしまうこともある。

この『輝く断片』では、後半の収録作になるほどその鷲掴み度は高くなっているようで、現在幸いにも特に人さみしい状態というわけではないにも関わらず、充分に魂が揺さぶられる経験が出来た。
誤解をして欲しくないのは、スタージョンの短編が人恋しい状態を優しく救ってくれるわけではない、ということ。人と人がわかりあえるなんて幻想だ、とも思わされるようなある種の共通理解不可能性の認識が、寂しい心にじんわりと塩を塗ってくれるような、そんな染み込み方をするのだ。

『ルウェリンの犯罪』や表題作は、いずれも再読になるが、やはりそうした思いを新たにできる傑作であると感じた。

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