『雷の季節の終わりに』恒川光太郎

雷の季節の終わりに
前作であるデビュー作『夜市』が結構気に入った恒川光太郎の初長編。
本屋で見かけて思わず購入するぐらいは期待が高かった。
『夜市』所収の2作品同様、この現世と別の世界との行き来、狭間を舞台としている。といっても同一設定というわけでもないのだが。
今回は、あちらの世界に『穏』、狭間の世界に『高天原』と、具体的に名前がつけられている。
そして、文体は叙情的ではあるものの、今回の話自体はさして叙情的というわけではない。
よって、というかなんというか、話に振れ幅が少ないのだ。話の展開がYA的というか(こんな言い方はYAをほとんど読んだことがないくせに不適格だろうが)、読者に想像させる余地があまりなくなっている。
話の流れも、いったい何が中心であるのか、とっちらかった印象を受ける。最後無理やり収束するような形で終わるので、まことにもってあっけない印象を受ける。
うーむ、今回はあまり推せないなあ。
スイスイとそれなりに面白く読めることは読めるのだが、不満に感じることの方が多かった。
前作に比べ今作は割とありがちなホラーに寄ってしまっているのではないだろうか。だとしたら、惜しいなあ。

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