『吉本興業の正体』増田晶文
まさにタイムリーというか、なんというか。
一種の暴露本のようなものかと手に取ったがさにあらず、綿密な調査に基づいた真摯なルポルタージュであるようで、元々が好きな分野だけにこりゃ読まずにいられない。
しっかりとボリュームもあり、読み応えたっぷり。さくっと読むつもりがそうはいかなかった。
資料等から再構成した吉本の創業時から隆盛期に至る歴史の部分が全体の約半分、長期に渡る社内外の関係者へのインタビューを基に吉本の現況を丁寧に解き明かしていく部分が残りの半分といったところか。
ただ私見だが、構成にやや難ありで、同じ話が何度か繰り返される部分が散見され、違う場面違う文脈で語られているとはいうものの、そこがやや冗長な印象を持たせる。
時間をかけて(連載とか)ゆっくり読んでいけば、気にならないかもしれないが。
また、中田カウスが吉本の正体を探る上での重要な視点としてほぼ全編に登場する。
この本がさらにタイムリーである由縁となるが。
ただ昨今取りざたされるような『怪芸人』の部分をストレートに調査の対象としているわけではなく、作者の吉本研究の縦軸となるような調査の協力者として登場するのだ。
ただその描写の端々に『怪芸人』ぶりがにじみ出ており、そこがこのルポの魅力のひとつとなっている。
反面、そのカウスの視点にいささか引きずられ過ぎているように見えるところが、この本の弱点ともいえるかもしれない。
とはいえ、おおむね力作という評価が妥当であろう。堪能した。
この番外編ともいえる記事をweb上で発見した。読めば雰囲気がつかめると思う。
http://web.soshisha.com/archives/yoshimoto/2007_0208.php