『あ・だ・る・と』高橋源一郎/集英社文庫
高橋源一郎は好きでよく読んでいた...なんて思っていたら『ペンギン村に陽は落ちて』を最後に、小説はずっとご無沙汰であった。15年も読んでないのね。つか途中随分出してらっしゃらなかったみたいだけど。
これはいかん、フォローしていきましょうと思って手に取ったのがこの『あ・だ・る・と』。その理由は先般亡くなった某女優の追悼の意味を込めたというわけでは特になく、BOOKOFFで探して見つかったのがとりあえずこの本だったというだけのことでタイミング的にはまったくの偶然なのだが。
偶然とはいえ、その女優とこの小説とはまったく無縁とはいえない。その女優こそ登場するわけではないが、彼女と深い縁のある平野勝之監督を模したと思われる人物がこの小説の主人公として登場するからだ。
内容はAV業界の現場がリアルにかなりエグく描かれていて、その現場もキワモノ系の嚆矢と目される某メーカーを明らかにサンプルにしていると思われ、良いコの皆さんは読んじゃダメよと云いたくなるような場面が続いたりもするのだが、最後は何故かリリカルに、ある種無理やり壮大なテーマをちらつかせつつ終わる。
途中の某メーカーの現場や実在人物を連想させる描写が続くところは、あまりにもまんまじゃないの、なんかサブカル系のルポを読んでいるかのようなキモチにさせられもしたのだが、読み飛ばそうとしても文章がスラスラ頭に入ってくる。
やっぱセンセイ、文章うまいわ。