車谷長吉を読み始めてもう何冊めかになるけど、一読巻置くあたわずというが、どれも最後まで目が離せず、ぐいぐい惹きつけられる。
ストーリーが波乱万丈であるとかそんなことではないのだが、ひとつひとつの描写から目を背けることが出来ない、そんな思いで読み続けることになる。
この『忌中』は、6つの独立した短編からなる作品集だが、「自殺」「心中」「殺人」のオンパレードで、舞台にも「墓」「古墳」等、「死」で満ち溢れている。
しかしながら、この本を読み終えて感じられるのは、「死」の静謐なイメージなどではなく、「生」のどうしようもなく無様な様子が、ねっとりした質感を持って迫ってくるということである。
そして時に見るに耐えないそれらの様子からも、車谷の筆にかかれば、やはり目を背けることが許されないのである。
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