ここのところのお気に入り桜庭一樹の新作である。
とにかく評判がいい。
『赤朽葉家の伝説』を既に凌いだとか、とにかく傑作とか、もうほんと絶賛の嵐。
気になるじゃないですか。
実際、本を手にとってみても、そんな傑作の“匂い”は確かにする。
引き込まれるように読む。
これまで読んだ彼女の他の作品同様、文章が肌に合うのか、するすると入ってくる。
またちょっと気になるところも同様で、細かい部分でのリアリティの欠如とでもいえばいいのか。
たとえば、それは「腐野」という名字であったり、新婦が一人でやってくる結婚式の一コマであったり、荒れる海の流氷のシーンであったり、かすかな違和感というか、スコッと中が抜けているような感じを覚えるのだ。
しかしながら、リアリティ云々を語るべき作品か否かということに関しては、十分留保をつけるべきであろうとも思う。
そんなの関係ねぇっ! って読者が大半だろう。
関係ねぇって云わせるだけのパワーが、この作品にあることも確かだ。
個人的にはいま一歩。
後半以降の部分が、こちらの期待に追いついてくれなかった。
あれあれ、このまま終わっちゃうのかよ、という不満が少し残ったんだよなあ。
ただ、題材、構成とも一級品で、読んで後悔しないことは保証する。
例によってあらすじはまったく紹介しないので、他をいろいろあたってみて興味を持ったら手にとって欲しい。