ほんの5年ぐらい前は絶望的であったスタージョンの翻訳状況はここにきて依然好調。
河出の奇想コレクションの中だけでもこれで3冊目である。
これだけ出るってことは、売れてるんですよね? それなりに。
佳きことである。
今作は長い中編である表題作が全体の約半分を占め、残り5編中2編が本邦初訳。
3編は既訳があり、大昔にスタージョン日照りが続いていた頃、あちこちから探し出して読んだものである筈だが、ほとんど内容は記憶になく、新鮮な気持ちで読むことが出来た(笑。
なかでも「必要」は結構傑作だったと思いこんでいたが、今回読むとそれほどでもないなあ。
白眉はやはり表題作である。
ちょっと変わった書き方がしてあることもあり、やや読みづらいなあ、と思いつつとろとろ読み進めていたのだが、なかなか内容が頭に入ってこない。
4分の1ほど読んで諦めて一度リセットして、もう一度頭から読んだら今度はすんなり読めるではないか。
決して難解というわけではないと思うのだけど、うーんやっぱある意味難しいのかも。
スタージョン特有の書き方と読み手の溝がピタッと合うと、いろんなものがスルスルッと見えてきて、ところどころ内面に突き刺さってくる。
カチッと明瞭に書いてあるわけではないので、こういう書き方は気持ち悪いと思う向きも多いだろうね。
この作品は解説等にもある通り、スタージョン的テーマの集大成的なところがある。
孤独、考え方、触れあい、合体...etc.
他の名作短編群でもおなじみのモチーフであるし、これでそれらと長編『人間以上』がなんとなく改めて繋がってくるようにも感じた。
こんな風にはスタージョンにしか書けない。
なにが凄いってうまく云えないけども傑作と思えるところが、実にスタージョンらしい作品。
『[ウィジェット]と[ワジェット]とボフ』シオドア・スタージョン
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