『真鶴』川上弘美
かなり評判がよかったので期待していたのだけど...。
相変わらずもやもやっと語られることが時に鋭い切り口を見せて、こちらに迫ってくるという作風なのだが、従来の作品に比べ柔らかい表現が押さえられている分、ごつごつした印象が強めに残る。
それを凄味とみる向きには、傑作かもしれない。
僕は今回はあまりはまれなかったなあ。
『ギリシア悲劇―人間の深奥を見る』丹下和彦(中公新書)
固有名詞のみ目にする機会が多いが、内容そのものにはあまり馴染みのないギリシア悲劇に関してちょろちょろっと知識を入れておこうと軽い気持ちで手にとったのだが、あてが外れた。
33編現存するという悲劇の中から11編を選んで詳細に解説されているのだが、どちらかというと解釈の領域の話がほとんどなので、基礎知識めいた話はあまり出てこない。
たとえば「機械仕掛けの神」なんてタームに関しても特に説明のないまま使われているという具合である。
というわけで、僕のような初心者向けの書ではないのだが、決して難しいわけでもないので、ギリシア悲劇の研究者はああこのようなことをされているのだなあ、ということはよくわかった、という感じである。